ウェブアクセシビリティ、何から?無料で始める中小企業の初期対応ガイド
ウェブアクセシビリティ、何から?無料で始める中小企業の初期対応ガイド
中小企業の経営者の皆様にとって、日々の業務に追われる中でウェブサイトの改善に十分な時間や予算を割くことは容易ではありません。ウェブアクセシビリティの重要性は理解しているものの、「どこから手を付けていいか分からない」「専門知識がなくて不安」といった課題をお持ちではないでしょうか。
このガイドでは、そのような中小企業の皆様が、特別な費用をかけずに、今すぐ自社のウェブサイトで実践できるウェブアクセシビリティ改善の具体的な第一歩を解説します。小さな改善から始めることで、より多くの顧客に情報が届き、ビジネスチャンスを広げることにつながります。
ウェブアクセシビリティとは何か、なぜ中小企業にとって重要なのか
ウェブアクセシビリティとは、年齢や身体的特性、利用環境に関わらず、すべての人がウェブサイト上の情報にアクセスし、利用できる状態を指します。例えば、視覚障がいのある方がスクリーンリーダー(画面読み上げソフトウェア)を利用して情報を得られるようにすることや、高齢者の方が文字の大きさを変更してもレイアウトが崩れないようにすることなどが含まれます。
中小企業にとってウェブアクセシビリティの向上は、以下のような具体的なメリットをもたらします。
- 顧客層の拡大: 高齢者や障がいを持つ方、一時的な状況でマウス操作が難しい方など、これまで情報にアクセスしにくかった潜在顧客にもサービスや商品が届くようになります。
- ブランドイメージの向上: 社会貢献に積極的な企業として、顧客や社会からの信頼が高まります。
- 法的リスクの軽減: ウェブアクセシビリティに関する国内外のガイドラインや法規制への意識が高まる中で、将来的なリスクを低減できます。
これらのメリットを享受するためにも、費用をかけずに始められる具体的な改善策から着手することが重要です。
無料でできるウェブアクセシビリティ改善の具体的なステップ
ここでは、中小企業の皆様が費用をかけずに、今すぐ実践できるウェブアクセシビリティの初期対応策を5つのステップでご紹介します。
1. 画像に「代替テキスト(alt属性)」を設定する
ウェブサイトに掲載されている画像には、その画像が何を表しているのかを説明する「代替テキスト(alt属性)」を設定することが重要です。視覚障がいのある方は、この代替テキストをスクリーンリーダーで読み上げてもらうことで、画像の情報を理解できます。
改善ポイント:
* 情報伝達の役割を持つ画像: 画像の内容を簡潔かつ正確に説明するテキストを設定してください。
* 例:
* 誤ったaltテキスト: alt="写真"
、alt="image"
* 良いaltテキスト: alt="新発売の地ビール「山麓の恵み」。豊かな香りとコクが特徴。"
* 装飾的な画像: 情報としての意味を持たない画像(例:背景画像、区切り線など)は、alt属性を空に設定してください(alt=""
)。これにより、スクリーンリーダーが無駄な情報を読み上げなくなります。
確認方法:
ご自身のウェブサイトの画像を右クリックし、「要素を検証」(または「Inspect Element」)を選択すると、HTMLコードが表示され、<img>
タグの中にalt="〜"
の記述があるか確認できます。
2. 見出し構造を適切に利用する(H1, H2, H3など)
記事やページのコンテンツには、階層的な見出し(<h1>
、<h2>
、<h3>
など)を適切に使うことが重要です。これにより、コンテンツの構造が明確になり、読者が情報を整理しやすくなります。特に、スクリーンリーダーの利用者は見出しを頼りにページ内を移動するため、正確な構造が不可欠です。
改善ポイント:
* <h1>
はページに1つ: ページのタイトルやメインテーマにのみ使用し、通常は1ページにつき1つに限定します。
* 階層を守る: <h1>
の次に<h2>
、その次に<h3>
というように、数字の順序で階層を保ってください。突然<h1>
の次に<h3>
が来るような使い方は避けます。
* 見た目だけでなく意味で使う: 文字を大きくしたり太くしたりするためだけに見出しタグを使用せず、あくまでコンテンツの構造を示すために用いるようにします。
確認方法: ウェブサイトを閲覧しながら、見出しが論理的な順序で構成されているかを確認してください。多くのブラウザ拡張機能(例: HeadingsMap)でも確認可能です。
3. リンクテキストを分かりやすく具体的にする
リンク(<a>
タグ)が何を示すのかを、リンクテキスト自体で理解できるように改善します。例えば、「こちら」や「詳細」といった抽象的な表現ではなく、リンク先のコンテンツ内容が推測できる具体的な言葉を使うことが求められます。
改善ポイント: * リンク先の内容を明確に: リンクをクリックした後に何があるのかを想像できるようなテキストにします。 * 例: * 誤ったリンクテキスト: 「製品一覧はこちら」 * 良いリンクテキスト: 「新製品の一覧を見る」 * 誤ったリンクテキスト: 「記事の詳細を読む」 * 良いリンクテキスト: 「ウェブアクセシビリティに関する記事を読む」 * 文脈に依存しない: リンクテキスト単独で意味が通じるようにします。
確認方法: ブラウザでリンク箇所にマウスカーソルを合わせ、リンクテキストから内容がわかるかを確認します。
4. キーボードだけで操作できるか確認する
マウスを使わずにキーボード(Tabキー、Enterキーなど)だけでウェブサイトを操作できるかを確認することは、アクセシビリティの基本です。身体的な理由でマウスが使えない方や、一時的にマウスが使えない状況でも、サイトを閲覧できるようにするためです。
改善ポイント:
* Tabキーで順序よく移動: Tabキーを押していくと、リンクやボタン、入力欄などにフォーカスが順序よく移動するか確認します。
* Enterキーで選択: フォーカスが当たっているリンクやボタンをEnterキーで選択できるか確認します。
* フォーカスインジケーター: 現在どの要素にフォーカスが当たっているかを視覚的に示す線や枠(フォーカスインジケーター)が明確に表示されるか確認します。表示されない場合は、CSSのoutline
プロパティなどを修正して表示させることを検討してください。
確認方法: ウェブサイトを開き、マウスを触らずにTabキーとEnterキーだけでサイト内の主要なページを巡回し、フォーム入力などを試してみてください。
5. テキストと背景の「コントラスト比」に配慮する
ウェブサイトのテキストの色と背景の色の組み合わせが、十分なコントラスト比を持っているかを確認することも重要です。コントラスト比が低いと、色覚に多様性を持つ方や高齢者の方にとって、文字が読みにくくなってしまいます。
改善ポイント: * 見やすい色の組み合わせを選ぶ: 例えば、薄いグレーの文字を白い背景に置くなど、判読しにくい色の組み合わせは避けます。 * デザインツールでの簡易確認: デザインツール(例えばFigmaやAdobe XDなどの無料プラン)やオンラインのコントラストチェッカーで、主要なテキストと背景色のコントラスト比を簡易的に確認することも可能です。ただし、厳密なチェックには専門ツールが必要な場合もあります。まずは、ご自身の目で見て「読みにくくないか」を判断するだけでも効果があります。
確認方法: サイトの主要なページをいくつか開いて、テキストが背景色に対して明確に読み取れるか、特に小さい文字や淡い色の部分を重点的に確認してください。
まとめ:小さな一歩が大きな成果に繋がる
中小企業の皆様にとって、ウェブアクセシビリティへの取り組みは、時に漠然とした大きな課題に感じられるかもしれません。しかし、今回ご紹介した「代替テキストの設定」や「見出し構造の整備」といった費用のかからない小さな一歩から始めることで、着実にウェブサイトの質を向上させ、より多くのユーザーに優しいサイトを構築できます。
これらの改善は、アクセスできる顧客層を広げ、ビジネスの機会を増やすだけでなく、貴社の企業イメージを向上させることにも繋がります。まずは、ご自身のウェブサイトで一つでも実践できることから取り組んでみてください。継続的な改善が、長期的な成功への道を開きます。
さらなるウェブアクセシビリティの改善については、このサイトの他の記事もご参照いただき、次のステップへと進んでいただけますと幸いです。